220以上ものブースが立ち並んだTRP2023。たくさんの企業・団体・コミュニティの個性あふれるブースが並ぶ中、今年初の試みとして行ったのがTetra Tokyo合同会社さんによる「ブース提供」です。
2015年パートナーシップ制度のスタート以降、TRPの活動にも注目が集まり、多くの方々から支持と支援をいただきイベント規模を拡大してきました。
社会に大きな変化をつくり出していく中で、企業・団体からのご協賛、ご支援は欠かせない存在となった一方で、昨今では「もっと企業と当事者コミュニティの直接的な繋がりをつくるにはどうしたらいいか」というのがTRPとしての課題でした。
そこで、今回はブース提供という新たな応援のカタチをつくり出していただいたTetra Tokyo合同会社・代表のトシさんと、今回のブース提供に当選された団体にお話をうかがってきました!
がんばる人を応援する、それが人間の本能
―ブース提供をしようと思ったきっかけは何でしょうか?
トシ:去年のTRPが終わった後に投稿されていたSNSがきっかけです。費用面で出展を躊躇、または断念する団体・コミュニティがいることを知り、何か解決する方法があればと思っていました。TRPの運営と相談した結果、ブースの無償提供という形で応援することに。4つのブース提供に加え、追加企画としてSNS広告の配信と自分たちのTetra Tokyoブース内を30分の枠で他の団体に解放するという2つの企画も行いました。
―今回のブース無償提供と自社ブースの開放と、他団体とコラボレーションをするのは大変だったと思いますが、なぜそこまでしようと思ったのでしょうか?
トシ:Tetra Tokyoの事業は広告・マーケティングの領域になるのですが、私自身が「当たり前」なやり方をすべて疑いたい人で、仕事でも何でも常に色んなアプローチを考えていい方法を探しています。自分たちの業界ではない人やコミュニティと協力したり、何かできることはないかを常に意識してやっています。
そういった思いが背景にあり、TRPでも同じように色んな人が出会える機会をつくりたいというのがありました。
―ブース提供、自社ブースの開放をしてみた率直な感想は?
トシ:当選した4団体はどのブースも楽しんでいました。きっと皆さんの中にある伝えたい思いやTRPのブースで形にしたいことがあって、「やりたい」という内から出るパッションがその生き生きさを生んでいたのだと思っています。「普段会えない人たちと出会えた」という声も多く聞き、来場した人たちとの接点が作れたことに価値を感じていました。費用の面で出られずにいたという方からとても感謝され、それは純粋に嬉しかったです。
また、自社ブースの30分枠のイベントも、多くの団体から喜んでもらえました。自分がやりたかったのは、人と人が出会う行動から何が生まれるかを観測すること。その意味も含め、この企画はデコボコがあってすごく良かったです。エンタメショーのように盛り上げてくれたり、企業ブースのような企画をする団体がありました。一生懸命に通行者に語りかける団体もいて、その様子を見て助け舟を出そうとする来場者がいる。これこそが多様性だなと感じました。結局、がんばっている人を応援するのは人間の本能だと感じました。情熱に勝てるものはない。すべてが上手に洗練された社会は飽きてしまう。それを理解した上で行動に起こすことが必要だと気づきました。
「いろいろ協力させてください」というご挨拶も複数団体からいただき、気持ちもほっこり。自分たちがブースを出すだけでは得られなかったものがあったと思っています。
SNSの投稿をきっかけに「ブース提供」「自社ブースの開放」という形でより参加しやすい環境をつくっていただいたTetra Tokyo合同会社さん。
TRPとしても企業の出展価格とは別に、活動の継続性などの一定の基準をクリアした非営利団体/個人へ特別価格でブースを提供してきました。
2015年以前はLGBTQのコミュニティを中心に開催してきたイベントであったため、資金面で開催すること自体が厳しい時代がありましたが、現在でも、コミュニティに対して出展価格を開催当初から変えずに実施できているのは、年々サポートしていただける企業が増えたからです。これにより当事者コミュニティやNPO法人が継続的に出展しやすい環境を整えられたのは大きな変化でした。
しかし、希望するすべての方が出展できるわけではないため、今回のTetra Tokyo合同会社さんの取り組みにより、TRPに出展したいと願う団体への直接的なサポートという新しい応援の形が実現しました。
TRPとしても「企業×コミュニティ」の新たなコラボレーションの可能性を感じました!
情熱が「新しい切り口=イノベーション」を生む!
―Tetra Tokyoさんのことを教えてください。御社が発信するものとは?この企画から期待するものは何でしょうか?
トシ:Tetra Tokyoが大切にしているのは「共生(インクルージョン)」「共創(コ・クリエーション)」「Disruption(創造的破壊)」この3つ。ありふれた従来のやり方を破壊し、新しい切り口を生み出すという考え方で、創業からずっとやってきました。同じチームでプロジェクトを進めていくスタイルではなく、案件ごとに最適なチームを組んであえてメンバーを固定せずに、異なる視点を常に入れていくスタイルの方が、実はもっと面白くて新たな価値につながるのでは?と感じています。これから多くの協力者を必要とするAI事業やコミュニティのプロジェクトを予定しており、さまざまな人に興味・関心を持っていただくことを目指しています。
―ブース提供から得た、新たな課題や気づきはありましたか?
トシ:1つはアライの人たちをもっと巻き込んでやりたいという思いがあります。こういった活動を推進するにあたり、すべてを当事者視点で語ることではないと思っています。
ビジネスでもそうですが、境界線、垣根がなくなっている今の時代、「個」を最小単位にしたときにジェンダー、セクシュアリティなど、当事者・非当事者どうこうではないのではと。僕自身もノンバイナリー。もっと頻繁にいろんなことができればいいですね。
ブース提供に当選した団体からの声をご紹介!
TRPとしてもはじめての試みとなったブース提供。まだまだ改善はあるものの、来年に向けて当選された団体の感想を伺いました。
【irOdori~彩り×踊り~(イロドリ)】
今回のブース提供企画は泣きそうになるくらい嬉しい機会。TRPをきっかけにアライになり「irOdori」を立ち上げましたが、まだまだ規模が小さく、この企画がなければブースは出せませんでした。当選の連絡をいただき、この日のためにいろいろな人を巻き込み「ひとつ」のブースを作れたこと、言葉では言い表せないくらい尊い経験です。つないでくれた方、つながった方。新しい出会いを広げてくれたTRPとTetra Tokyoに感謝しています。
【Haus of Gaishoku】
ブースが出展できる!こういう企画からTRPに参加するチャンスをもっともっといろいろな人に与えてほしい。一緒にブースに立っているメンバーは、Grindr(グラインダー)というゲイアプリでTRPを知りました。天候にも恵まれ、最高にムラムラする!!
【TELL】
TRPには5〜6年前から参加していますが、このような機会をいただきとても感謝しています。私たちは英語による無料支援サービス「いのちの電話」で悩み相談を受け付けている団体。社会的なメンタルケアを必要としている多くの人たちのために、イベント2日目にはインターナショナルスクールのボランティアメンバーが来てブースに立ってくれます。そうしたつながりを大切にしながら、私たちの活動をもっと広めていきたいです。
【乙女塾】
初めてTRPに参加しましたが、こんなに人がいるんだとびっくりしています。いろいろな国籍、性別の方が参加されていて関心が高いというか、出会いを求めていると分かりましたし、こういうイベントってすごく大事だなと思いました。乙女塾は男性のボイストレーニングやメイクレッスン、交流会をメインに東京・下北沢で活動している団体ですが、遠方でもやってほしいなど普段なかなか聞けない生の声をさっそくいただいています。私たちの活動が全国で求められていると、あらためて知ることができました。
ブース提供という、企業と出展を希望している団体・コミュニティを繋ぐ新たなカタチ。
その応援のカタチを実現したTetra Tokyoさんの考え方や価値観をご紹介させていただきましたが、この取り組みがどんなイノベーションを起こしてくれるのかTRPとしても楽しみです!