人生の喜怒哀楽に共感し 行動するきっかけにしてほしい
長年に渡って積極的にCSR活動に取り組んでいるセガサミーグループ。昨年は新たに「セガサミー サステナビリティビジョン」を策定。グループ社員を巻き込んで、次世代のサステナビリティ経営を目指している。セガサミーサステナビリティ推進室の石井優貴さんに取り組みの背景にある同社の理念や、今後の方向性について聞いた。
聞き手・文/宇田川 しい
写真/案納 真里江
2030年に、
どのような企業であるべきか
——セガサミーさんはCSRの取り組みを長く続けてらっしゃいますね。
石井優貴さん 20年ほどになるでしょうか。
——昨年の5月には、新しく「セガサミー サステナビリティビジョン」を策定されました。
石井 これまでもCSRを推進する方針を随時、定めてはいました。昨年の5月に改めてセガサミー サステナビリティビジョンを作った経緯としては、やはり時代の変化というか、社会的に求められる要請の変化ですね。もうちょっと具体的に言うとコーポレートガバナンス・コードに沿った方針を策定したということです。
——コーポレートガバナンス・コードというのは東証が制定した企業統治の指針ですね。
石井 はい。コーポレートガバナンス・コードには「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」という章があり、その中に社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーについてや、女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保といった項目があります。これに準拠した形で、セガサミーグループのサステナビリティとは何かを明示することにしたわけです。
——SDGsについての社会的関心も高まってきていますね。
石井 SDGsというのは2030年に期限を切った目標ですよね。2030年には、いわゆるZ世代がビジネスの中軸になっているはずです。次世代が活躍する2030年に、セガサミーグループがどんな企業になりたいのかということを具体的に示すべきだという考えもセガサミーサステナビリティビジョン策定の背景にはありました。
サステナビリティビジョンの根本にある
人を大切にするという考え
——セガサミーグループのサステナビリティビジョンには「人生は喜怒哀楽で溢れている そんな人々の生活に彩り豊かな感動体験を添える それがセガサミーのサステナビリティです」とあります。いかにもエンターテイメント企業らしいと感じました。
石井 エンターテイメント企業としては、ダイバーシティということも重要です。古い価値観でガチガチに固まっていては、感動を与えるエンターテイメントは作り出せません。自由でクリエイティブな発想を最大限に発揮するには、年齢や性別にかかわらず誰もがいきいき仕事ができる環境が必要です。ですから当社は“人財”という言葉を使います。人を大切にする風土があるんです。
——自由な社風なんでしょうか。
石井 ワークライフ・バランスをとても大事にしています。いろんな、趣味を持っている人がいて、それをお互いに尊重するカルチャーがあります。例えばですけど、私はウエイト・トレーニングが趣味でベストボディ・ジャパンといった大会にも出場しているんです。大会前には減量が必要で食事制限が大変なんですけど、みんな協力してくれるんですよ。よく、休憩時間におやつ交換なんかするんですけど、そういう時に「石井さんは減量中だからナシね」なんて(笑)。私以外には、ランニングが好きで、早朝に走ってから出社する人がいるんですね。出社が早い分、16時くらいには退社するんですけど、ミーティングなんかは、みんなそれに合わせて早めの時間に入れるようにしています。子育て中の方もいて、子どもの学校行事や、体調不良などでも休みが取りやすいように、フレックス制度やテレワーク制度が設けられています。
——ライフワーク・バランスというと、子育てや介護といった話題がよく挙げられますが、個人の趣味も尊重するというのは大事ですね。
石井 不公平感がないですよね。子どもがいない人でも、他の面で尊重されていると感じるので。逆に育休をとるような時も引け目を感じなくてすみます。
——人を大切にするという考えが浸透しているということなんでしょうね。
石井 人を大切にするというのは、もちろん社内だけではなく、お客様や、お取引先様に対しても同様です。当社が提供する製品の負の側面もしっかり捉えて、大学研究機関と共同で依存症研究に取り組むなどしています。またグループ企業ではサプライチェーンにアンケートを行い、労働者への不当な取り扱いがないかチェックしています。
製品やサービスに反映される
ダイバーシティ&インクルージョンの理念
——今、お話しされたような、人を大切にする社風が、LGBTQ+に対する姿勢にも反映されているんでしょうか。
石井 グループ会社のセガが提供している『PSO2 ニュージェネシス』というオンラインRPGがあります。RPGでは一般的に、自分の使用するキャラクターを好きなように設定できます。このキャラクター設定に以前は男性か女性かという選択肢があったんですが、2020年の配信からはなくなりました。性別ではなく、好きな体型や顔のパーツを選んでキャラクターを作ります。このことについて、LGBTQ+の人に配慮したと発表しているわけではありません。むしろ、自然にこうなったということなんです。多様性を尊重し、人を大切にする社風の中で、クリエイターの感覚として、そこに性別は不要ではないかという考えに至りました。
——男女二択の性別欄は、トランスジェンダーやジェンダーフルイドの人を傷つけることになりますね。
石井 当社ではリクルートウェアのあり方を考える「#きがえよう就活」プロジェクトにも賛同しています。すでに当社の面接には8割程度の方が普段着で来られるようになっています。
——トランスジェンダーが、性同一性に合わせたリクルートスーツを着るかどうか悩むケースがありますが、服装の自由化はその答えになるかもしれませんね。
石井 もちろんLGBTQ+イシュー以外でも多様性に配慮しています。グループ会社のセガトイズでは、障がいのある人も一緒に遊べる玩具を数多く開発しているんです。光や音を発することで、視覚や聴覚に障害がある人も楽しめるものです。日本おもちゃ大賞の共遊玩具部門を何度も受賞しています。
お互いのライフスタイルを
尊重しあえる社会に
——今年のTRPのテーマは「変わるまで、続ける」です。セガサミーではTRP2023を通じて世の中がどう変わって欲しいですか。また、変わるまでどんなことを続けていきますか。
石井 世の中にもっとダイバーシティ&インクルージョンという考えが浸透して欲しいですね。私の働いている部署にはさまざまな年齢や性別の人がいます。経歴も、以前は経理にいたという人や、社会人陸上部のコーチだった人などさまざまです。また、同じフロアでは、障がいを持つ人たちも一緒に働いています。本当に全く違った背景を持つ人たちが大勢集まっているんですが、チームワークはとてもいいんです。
——チームワークの秘訣は?
石井 それぞれのライフスタイルに興味を持って理解することだと思うんです。性別とか、出身とか生まれ持った背景ではなくて、その人が今、どんなことを考えてどんな生活をしているのか。例えば私がウエイト・トレーニングが趣味だとか、あの人はランニングが好きだとか、そういうことに興味を持ってコミュニケーションすることが大切なんじゃないでしょうか。自分のことをもっと知ってもらいたい、相手のことをもっと知りたいという善良な興味を誰に対しても持てる世界になったらいいですね。
——TRPを通してそうした発信を続けることで世界が変わっていくでしょうね。
石井 先ほど申し上げたように、セガサミーグループのサステナビリティビジョンには「人生は喜怒哀楽で溢れている」とあります。喜怒哀楽というのが当社のキーワードの一つです。エンターテイメントというと、ただ楽しいこと、と考える人もいるでしょうが、そうではありませんよね。感動作には悲しいエンディングのものだってあります。
——ただ楽しいだけじゃない、もっと奥深いもの、ということでしょうね。パチンコやパチスロも、勝てば嬉しいですけど、負けたら悔しいですもんね(笑)。
石井 喜怒哀楽全て含んだ人間味のあるものを提供したいという思いがあります。TRPを通じた情報発信もそうです。例えば差別に苦しむ人がいることをお伝えして、哀しいと思ったら、自分も何か手助けしようかなと思ってもらいたい。楽しい気分になるような情報に触れたら、自分もやってみたいなと共感してほしい。セガサミー・グループの取り組みに共感してもらって、行動するきっかけにして欲しいですね。