全ての人が平等に扱われ、受け入れられるインクルージョン:
誰もが個性や能力を発揮し活躍できる多様性の社会を目指して。
ブルームバーグのLGBTQ+コミュニティへの架け橋とエンパワーメントの取り組み

ブルームバーグ、香港在住のダイバーシティ&インクルージョン(アジア太平洋地域)担当責任者のアリーシャ・フェルナンド氏(写真左)が、東京のダイバーシティ・リクルーター・ジャパンの高橋 也氏(写真右)とオンラインで対話中。

聞き手・文/オリビエ・ファーブル
写真/オリビエ・ファーブル、ブルームバーグ L.P.提供

企業情報:
ブルームバーグ L.P.は、世界176都市にオフィスを構え、118の報道局を持つ、世界有数の金融テクノロジーおよびメディア企業です。ブルームバーグの専用端末は、325,000人の顧客に金融ニュースやデータを配信し、450以上のメディアに1日5,000以上のニュース記事を配信しています。
(参照:https://about.bloomberg.co.jp/

 

ブルームバーグ・アジア太平洋地域のダイバーシティ&インクルージョン責任者であるアリーシャ・フェルナンド氏は、香港のオフィスからオンラインでインタビューに参加し、「ブルームバーグに訪れる人は、社員のみでなく、お客様、将来的なお客様、そしてベンダーの皆様などすべての方々が、歓迎され、居心地の良い安心できる場所であるべき、と考えています」と語りました。

ブルームバーグのダイバーシティ&インクルージョンの理念である “Inclusion of all, Exclusion of None” すなわち「全ての人が平等に個性や能力を発揮して参加できる」という考え方の重要性をフェルナンド氏は述べました。

フェルナンド氏や同インタビューに同席したフェルナンド氏の東京の同僚は、日本オフィスにおいてもこのD&Iの考えは同様であるとしたうえで、社内の文化とオフィスの外の現実との間に時として現れる文化の違いについても触れました。

「日本ではD&I(Diversity and Inclusion、多様性と一体性:多様な人材を受け入れ、個々の能力が発揮できる環境をつくること)を問題意識として取り上げ、一般的に語られるようになってから、日はまだ浅いのではないかと思います。私たちにとっての課題の一つとして、いかにして日本の同僚にとってD&Iを身近に感じ、理解できる形で、適切なものにするかということです。」とフェルナンド氏は言い、次のように述べます。

「私たちは、決して誰に対してもブルームバーグの理念を従うことに無理強いはしませんが、当社のドアを実際にくぐると、そこにはとてもオープンでサポーティブな文化や環境があることを感じられると思います。」

東京オフィスで勤務するダイバーシティ・リクルーター、高橋 弦也氏も同感であるとし、「ブルームバーグ東京オフィスの中には、グローバルな環境があります。しかし、私たちはオフィスの外で社員がどこまで周囲からの理解やサポートを受けられているのかは一様でない、ということを認識しなければいけません。」と指摘します。

フェルナンド氏は、ブルームバーグはこの隙間を埋める重要な役割を担っていて、Tokyo LGBT & Ally Community(BPROUD)コミュニティという社員が自発的に参加するLGBTQ+社員リソースグループ(ERG)を通してこの課題に積極的に取り組んでいる、と説明します。

ブルームバーグは2022年、work with Prideが授与するPride Index 2022でLGBTQ+に関する理解促進や権利擁護のために自社・自団体のみならず、セクターを超えた主体と協働するコレクティブ・インパクト型の取り組みを推進している企業としてRainbow認定を受けたことからもわかるように、この戦略は効果的であると思われます。

ブルームバーグのERGコミュニティの会員数は、2021年1月の126名から今年の同月には167名と、年々増加しており、職場の方が友人や家族よりも安心してカミングアウトできる環境になったという社員もいます。

「東京オフィスの中でLGBTQ+であることをオープンにしている人が必ずしもオフィスの外で当事者であることをオープンにしているとは限らない」と高橋氏は語ります。東京オフィスの多くのスタッフのデスクには、LGBTQ+コミュニティへの支持を示すために、プログレス・プライド・フラッグが掲げられており、オフィスのあらゆる場面でLGBTQ+へのサポートの意思表示が確認できることも大きな要因のようです。

欧米では、まず親しい友人や家族にカミングアウトする傾向があるため、日本のこういった環境は、欧米と大きく異なるとフェルナンド氏は言います。

また、多くの欧米諸国とは異なり、日本ではLGBTQ+保護法がなく、同性婚も認められていません。ブルームバーグはこういった法的な課題のなかで、舵を取っています。

ブルームバーグは、LGBTQ+の従業員に企業の福利厚生やサポートを提供するために、代替的かつ創造的な解決策を提示してきました。例えば、トランスジェンダーの社員が性別適合手術を受ける際、フレキシブルに働き方の調整やサポートを検討することや、同性パートナーと一緒に海外から日本への転勤を希望する社員に必要なアドバイスの提供、などです。

D&Iの取り組みは、人事や経営層が主導することが多いのですが、それとは対照的に、このようなボトムアップ型のD&Iコミュニティがあるからこそ、ブルームバーグが辿り着いたソルーションが実現できたのです。

フェルナンド氏は、従業員がD&Iの使命にコミットすることで、トップダウン構造では軽視され、見逃されたりするようなニーズに対する認識を高め、きめ細やかに対応することができたと述べています。

例として、フェルナンド氏は、コロナ禍において、会社に属していながら孤立感を感じていたLGBTQ+の従業員のニーズに気づくことができた、としています。

ブルームバーグのLGBTQ+コミュニティーの一人が、「私の場合、職場が安全な場所だったから、カミングアウトできたものの、コロナ禍では、後ろ向きになっていて、自分のアイデンティティを隠そうとしていた自分がいた」と話していたことを、フェルナンド氏は思い出します。そこでブルームバーグは、社員が互いにつながり、彼らのサポートネットワークとなるための「ホームアローン」と呼ばれるオンラインでつながれる機会を考案し、提供しました。

「従業員リソースグループのメンバーが、このように感じていたことを知らせてくれたおかげで、彼らのニーズに合わせたソルーションを提供することができました」と述べました。

高橋氏は、LGBTQ+コミュニティが自主的に東京レインボープライド2023への参加を呼びかけるために、4月上旬に実施したオフィス内のミニ・パレードを例に挙げ、強い自主性と関与の意識が、時には自分たちのイベントを作り出すことにつながると付け加えています。

 

高橋氏は、LGBTQ+であると公言する社員として、ブルームバーグ内のワークが多層的であることも、コミュニティのメンバーの強い安心感を生むことにつながっていると語ります。

「何層にも重ねて自分の声を上げられる場所が、積み重なっているというところも非常に大切なのだと感じています」

ブルームバーグでは、D&Iがスタッフのトレーニングやリーダーシップの大部分を占めているという強い意識があるといいます。

スタッフは入社時のオリエンテーションにD&Iトレーニングが含まれており、入社後もさまざまなD&Iトレーニングを受けることを「強く推奨」されています。リーダーシップ層においては、「インクルーシブ・リーダーシップ」が必須であり、ブルームバーグの全世界のリーダーの97%がこのトレーニングを修了しています。

ブルームバーグの社員や管理職は、レインボーストラップや、ブルームバーグ端末の形をした小さなレインボーピンを身につけることで、LGBTQ+コミュニティへの支持を示しています。また、英語を話す際に、どのジェンダー代名詞を使っているか、を示すバッジをつけている社員もいます。

フェルナンド氏は、ブルームバーグでLGBTQ+コミュニティを支援する“仲間”であるためには、課題に積極的に参加することが必要だと言います。

「もし、何か違和感を覚えたり、誰かがインクルードされずに辛い思いをしていると感じたら、そのことに対し、行動する勇気を持つこと、そして、LGBTQ+を取り巻く様々なトピックに好奇心を持ち、参加することを意味します」

高橋氏は、ブルームバーグが、LGBTQ+コミュニティの声が、今年の東京レインボープライドにゴールドスポンサーとして参加することにつながったことを特に誇りに思うと述べました。また、参加し、一丸となってパレードすることで、LGBTQ+コミュニティの皆様が、積極的にLGBTQ+の課題に向き合い、自分らしくいられる企業があることに気づいてくれることを望んでいる、と言います。

「これはブルームバーグだけにとどまらないのです。私たちは大きなムーブメントの中の一つの声でしか過ぎません。私は東京レインボープライドの理念が更に広がり、出来るだけ多くの皆様に感じていただけることを期待しています。」と、高橋氏は付け加えました。

フェルナンド氏も、同様、ブルームバーグが単に自社の経験を共有するだけでなく、周囲の皆様が経験したことから学びたいと考えています。

「世の中には素晴らしい取り組みを実施されている会社があり、おそらく私たちが考えもしなかったような活動を、すでに始めていらっしゃるかと思います。そういった皆様には、ぜひ情報を発信していただくことで、私たちも学ばせていただきたい、と考えています。また、我々の取り組みをお客様、そして関係者の皆様に知っていただくことで、皆様自身の活動を開始、または共に活動させていただくきっかけとなることができれば、幸いと考えています。」


“Inclusion of all, Exclusion of none”
Bloomberg’s mission to boost LGBTQ+
engagement by bridging the gaps

Bloomberg’s Alisha Fernando (left), Head of Diversity and Inclusion (APAC) in Hong Kong chats online with Genya Takahashi (right) Diversity Recruiter Japan in Tokyo.

Corporate information:
Bloomberg is a leading global financial technology and media company with offices in 176 cities worldwide and 118 news bureaus. Bloomberg’s dedicated terminal delivers financial news and data to 325,000 customers and distributes more than 5,000 news articles per day to over 450 media outlets.
(Source: https://about.bloomberg.co.jp/)

Interviewer, writer, photographer: Olivier Fabre
Photo courtesy: Bloomberg L.P.

“Every single person that walks through our doors, whether you’re an employee, a client, a prospective client or a vendor, should feel welcomed, feel safe and feel respected,” said Alisha Fernando, Head of Diversity and Inclusion of Bloomberg Asia Pacific from her office in Hong Kong.

“Inclusion of all, exclusion of none,” Fernando said, repeating the Bloomberg D&I mission statement.

This is equally true in Japan, where she and her colleagues in Tokyo describe cultural differences that can emerge between the company culture and the reality outside from time to time.

“The D&I conversation is quite young in Japan,” she said. “One of the challenges is how do we make D&I accessible and appropriate for our Japanese colleagues in a way that makes sense for them.”

“We obviously don’t push anyone, but when you walk through our Bloomberg doors, I feel like you feel a sense that the culture is very open and supportive,” she said.

Genya Takahashi, Diversity Recruit in Bloomberg Japan, agrees.

“The Bloomberg Tokyo office has a global environment. However we have to acknowledge that some of our employees experience varying levels of acceptance and support outside of the office,” Takahashi said from their offices located a stone’s throw away from Tokyo station.

Fernando describes Bloomberg as having a key role in plugging this gap and is actively addressing this challenge through BPROUD, their LGBTQ+ employee resource group (ERG) or community as they prefer to call these groups internally.

This strategy appears to be effective, as evidenced by Bloomberg’s recent Rainbow ranking on the Pride Index, awarded by Work with Pride.

Internally their ERG community has seen a year-on-year increase in membership from 126 in January 2021 to 167 in the same month this year, and some employees have even felt safe enough to come out at work before coming out to friends or family.

“People who are open in the Tokyo office are not necessarily open outside (the office),” said Takahashi in the Tokyo office, where many staff desks fly the progressive rainbow flag in a show of solidarity to the LGBTQ+ community.

Alisha said that this dynamic is very different in the West where people tend to come out to close friends and family first.

Also unlike in many Western countries, Bloomberg must navigate legal challenges in Japan due to the absence of LGBTQ+ protection laws and a lack of recognition of same-sex marriages.

Despite these challenges, Bloomberg has successfully implemented alternative and creative solutions to provide corporate benefits and support to their LGBTQ+ employees. These include flexibility and support for transgender staff undergoing transition, as well as advice for same-sex partners of staff who wish to transfer to Japan with their loved ones.

All this has been made possible by the bottom-up structure of their diversity & inclusion communities, which contrasts with many Japanese D&I initiatives which tend to be led from above by human resources or senior management.

Fernando said that having employees committed to their D&I mission has helped raise awareness of needs that may otherwise be ignored or missed in a top down structure.

She gave an example of how, during the COVID-19 pandemic, they had nearly missed the needs of LGBTQ+ employees who were feeling isolated within their own homes.

“I feel like I’ve gone backwards and I’ve gone back into the closet because I was out at work and that was my safe space,” Fernando recalls one member of Bloomberg’s LGBTQ+ community telling her. That prompted the company to come up with sessions called “Home Alone” for colleagues to connect with one another and be a support network for them.

“If our employee resource groups didn’t inform us of that, we would have missed it and we would have thought we were doing a great job,” she added.

Takahashi adds that there is a strong sense of initiative and involvement which sometimes results in creating their own events – like the mini-parade through their offices they planned for early April to drum up attendance for the Tokyo Rainbow Pride 2023.

 

Takahashi said that as an openly LGBTQ+ employee, the fact that the support network in Bloomberg is also multi-layered helps create a strong sense of security for members of the community.

“It is very important to know that there is somewhere I can talk about myself in my own words, and that it is not just one person, but layers upon layers of people who understand me in the community,” he said.

There is certainly a strong sense in Bloomberg that D&I is core to much of the staff training and leadership. Staff go through D&I training from the on-boarding process and further D&I training is otherwise ‘highly recommended”. At a leadership level, “inclusive leadership” is even mandatory, with 97% of Bloomberg’s leaders globally having completed this training.

Those employees and management in Bloomberg often show their support of the LGBTQ+ community by sporting rainbow lanyards, or small rainbow pins in the shape of the ubiquitous Bloomberg terminal. English speakers can also wear badges which help point out which pronouns the wearers identify with.

Fernando said that being an ally in Bloomberg requires active participation in the issues.

“If you see something that doesn’t sit right or that someone is not being included, then you feel empowered to do something about it,” she said. “Secondly, it means that you’re curious and engaged in the various topics around LGBTQ+.”

Takahashi said Bloomberg this year is especially proud to be part of Tokyo Rainbow Pride as a Gold Sponsor. He hopes that by participating and marching as one, people in the LGBTQ+ community will realize that there are companies out there which are progressive and where they can truly be themselves.

“But it’s not just about Bloomberg. We’re just one voice in a much bigger movement and I hope that Tokyo Rainbow Pride’s ethos will spread and be experienced by as many people as possible,” Takahashi added.

Fernando agrees that Bloomberg is keen to not only share their experience but also learn from what others have experienced.

“We would like to share our journey and influence our clients and partners with a view to prompting them to either start their own journey or join with us on ours,” she said. “But also there are companies out there that are already doing an amazing job, probably doing things that we haven’t even thought about, and so we’d encourage them to also share with us so that we can learn from them.”